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決意 7

Penulis: 煉彩
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-21 19:56:11

 美和さんは私をキッと睨みつけると

「美月さん、わかっていると思いますけど、あなたが·········私が頼まれているんですよ?私が昨日、アドバイスをくださいって言ったのは、気を遣ったつもりなんですけど。カフェ事業だって、別にあなたの料理が認められたわけじゃない。孝介さんがシリウスの社長と良い関係を築きたくて選択したことであって、会社のためなんです。シリウス向こうだって九条グループっていう大きな企業と関りを持ちたかったから。あなたの力じゃないんです。一人じゃ何もできないのに。孝介さんのお荷物だって、いい加減自覚したらどうですか?掃除もできない、料理もできない。孝介さんから········のに。痛い女すぎますよ?」

 あれ?美和さんって、冷静なイメージだったけど。

 彼女の本音を直接聞くことができて、怒りよりもなんだかスッキリした。

 それに――。

 こんなに話してくれて、かえって好都合だ。

「どうして美和さんがそんなことを言えるんですか?シリウスとか九条グループとか。それは美和さんの推測ですよね?まさか、孝介さんが会社の内情を美和さんに話したんですか?あと、なんで私が孝介さんから·······なんてことを言えるんですか?」

 私が孝介から愛されていないことは確か。

<愛されてもいないのに>なんて発言をしてしまったのは、美和さんが孝介と不倫関係にあるからこそ。愛し合っているのに、報われないから。そんな僻みとも取れる発言が出てしまったんだよね。

「っ……!!」

 美和さんは唇を噛みしめていた。

「すみません。今日はもう帰ります。具合が悪くなってしまったので。早退したこと、孝介さんには·····連絡をしておきます」

 彼女は、エプロンも外さずに部屋から出て行った。

 これまで美和さんとは、表面上はうまくやってきたつもりだった。

 それが今日、一瞬で崩れてしまったけれど、彼女の本性を実際に肌で感じることができて良かった。

 彼女は孝介に今のことを都合の良いように話し、助けを求めるだろう。

 悲劇のヒロインを演じるに違いない。

 私は帰ってきた孝介から、どんな仕打ちをされるかわからない。

 今の私には、とても心強い味方が居てくれる。

 だから、きっと大丈夫。自分の未来のために頑張るって決めたんだ。

 気持ちを切り替えなきゃ。

 
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  • Love Potion   最終話

    「お疲れ様です。オーナーが女性を連れていらっしゃるなんて、初めてですね」 バーテンダーさんが迅くんに声をかけた。 私は今、迅くんと再開したBARに彼と一緒に来ている。「もしかしてあの時の方ですか?」 私のこと、覚えているの? かなり前のことなのに。すごい記憶力。「そうなんです。よく覚えていますね。やっと僕の彼女になってくれたんですよ」 敬語で離す彼は、社長モードだけど、声音は穏やかだ。「オーナーが自分から女性の隣に座るところをあの時初めて見たので、よく覚えています」 慣れた手つきで手際よくカクテルを作り、スッと私の前にグラスを置いてくれた。 あの時と同じ、綺麗な瑠璃色だ。  カクテルを一口飲む。「美味しいです!」  そして覚えていてくれたからこそ、アルコールも少なめにしてくれたみたい。飲みやすい。「それは良かった」 このバーテンダーさんとは、オープン当初からの付き合いらしく、紹介したいと迅くんから言われた。 お店を出る時に「幸せになってくださいね」そう温かな声をかけられた。  あっ、そう言えば……。「ねぇ、迅くん。今日カクテルニ杯くらい飲んじゃったけど、あの時みたいに変なカクテルにすり替えてないよね?Love Potionとかって言うお酒」 私が見ている限りでは、変な素振りもなかったし、迅くんがお酒を作ることもなかった。だけど、たまに予想以上のことを彼はするから心配だ。 一時的なものかもしれないけど、またあんな身体にされても困る。 タクシーを拾おうとしていた迅くんの動きが止まった。しばらく無言だったが――。「……。ごめん。あれ、嘘」 ウソ、ウソって?「あれは俺が咄嗟についた嘘。惚れ薬とか媚薬とか、そんな効果はない。Love Potionの中身は普通のオレンジジュースとピーチリキュール、あと……」「ちょっと!迅くん!!私、信じてたんだけど!」「美月はあの時から俺と結ばれる運命だったんだよ」 彼の一言で何も言い返せなくなったが、裏切られた気分になった。 じゃあ、普通のお酒で私あんな風になっちゃったの!?同時に恥ずかしくもなって……。「迅くんのバカ」  涙が出てきた。「美月!?泣くなよ!」 私の涙に慌てている彼は、子どもの頃と同じ顔をしていた。 その後――。 私は|カフ

  • Love Potion   二人で 2

     その後の生活は、迅くんが言った通り、大変な騒ぎとなった。 あの九条グループ社長の息子が怨恨による犯行で、他企業社長を刺したというニュースは、面白おかしくメディアで取り上げられた。 社員からの告発で、孝介が私的に会社のお金を横領していたことも世の中に知られる形になってしまったし、どこで情報が洩れたのか不倫をしていたことも報道された。 孝介の父である九条社長は責任を取って退任し、今は河野さんって人が社長になったと聞いた。 もちろん、私にも何人もの記者が取材に応じてほしいと依頼が来たけれど、全て断っている。 迅くんのアパートに住んでいることがバレたらまた面倒なことになるため、彼の配慮でホテルを転々としながら生活をしている。 毎日迅くんとは電話をしているが、彼とも会えていない。 そんな生活が続いた、一カ月後――。「迅くん!」 久しぶりにアパートで彼と会えることになった。「会いたかった」 彼に抱きしめられる。 どうしてこんなに落ち着くんだろう。「ごめん。大変だったな」「ううん。迅くんの方が大変だったでしょ。もう傷、痛くない?」「あぁ。大丈夫。明日、美月と一緒に行きたいところがあるんだ」 明日?どこだろう。「うん。どこ?」「秘密」 彼が秘密って言う時は、何かを考えている時だけど。何をするんだろう。  次の日の夜、迅くんに連れてきてもらった場所は――。「ここって。小さい頃、迅くんと初めて会った公園だ!」 車から降り、誰もいない公園を二人で歩く。 遊具は随分と変わってしまい、迅くんと一緒に会話をしたあのトンネルもなかった。「懐かしいな。小さい頃の迅くんと過ごした記憶がなくなってたこと、本当に後悔してる」 この公園で出会って、二人で遊びながら過ごして、成長して……。 あのまま迅くんとずっと一緒に過ごしていたらどうなっていたんだろう。 私の初恋の人は迅くんだったし、迅くんもあの時の私のことを好きだと言ってくれた。 大人になってもその関係は続いていたんだろうか。 もし彼の近くにあのまま居ることができたら、少しでも彼を助けてあげられたかもしれない。「美月が悪いわけじゃない。後悔なんてしなくていい。今こうやって一緒に居られることが大切だろ?」 彼が手を繋いでくれた。<今一緒に居られることが幸せ> 過去には戻れない

  • Love Potion   二人で 1

     あっれ……。なんかおかしい。「約束な?」「えっ」 目を擦り、涙を一生懸命拭い、彼と目を合わせる。 迅くんの顔を見ると、薄っすら笑っているような……。 確かにワイシャツに血が付いてる。 だけどよく見ると、出血量が増えていない気がした。 これは――。「加賀宮さん。もういい加減、やめてください。ほんとーに美月さんに嫌われますよ」 亜蘭さんが全然心配してない。「どういうこと?」 私が状況を理解できないでいると――。「はぁ。痛いのは本当なんだから、少しくらい労われよな。亜蘭」 そう言って彼は上半身を起こした。「迅くん、大丈夫なの?」「大丈夫。俺があんなやつにヤられるはずない。あいつが俺を刺そうとした時、わざとちょっとだけ刺された。ナイフ掴んで止めたから、手も切れてる。けど、死ぬようなケガじゃない」「念のため、ハンカチ、手に巻いといてください」 亜蘭さんが切れている迅くんの手をハンカチで止血した。「あー。さっきの美月、可愛かったな」 そんな呑気なことまで言っている。 私は空いた口が塞がらない。  でも――。「良かったぁ……」 安心したからかまた涙が出てきた。 その時、パトカーの音と救急車の音が聞こえた。 「通報はしておきましたから。こんなことして、あの人。九条社長もしばらく忙しそうですね。大きなニュースになりそうですよ。それに、うちの会社も」 はぁぁぁと深く重い溜め息を亜蘭さんは吐く。  孝介は、周りの人に抑えられていた。 けれど、迅くんが普通に立ち上がっているのを見て、目を見開き、驚いている。「お前!!なんで!!?」 再び暴れそうになった孝介を周りの人が再度押さえつける。亜蘭さんも手伝っていた。 そんな孝介に迅くんは「好都合だった。ありがとう」 私には向けない冷たい眼で言葉をかけた。 間もなく、救急車と警察が駆けつけ、私たちは事情を説明し、迅くんは救急車で病院へ運ばれた。 私は救急車に同乗し、引き続き亜蘭さんは警察に事情を説明していた。 病院で治療後、警察にはありのままの話をした。 その後、迅くんのアパートに帰宅し、今私は二人分の温かいお茶を淹れている。 迅くんは腹部と手のひらに刺し傷と切り傷。 軽傷とまではいかないけど、命に別状はない。「また傷跡、残っちゃうかな。私のせいで」

  • Love Potion   それぞれの行方 16

    「久しぶりです、加賀宮さん。まさか、そういうことだったんですね。あなたが必死に俺を美月から離そうとする理由がやっとわかりました。ただの知人じゃなかったわけですね。俺はあんたらに騙されたわけだ」 久しぶりに見る孝介は、この前よりもかなり痩せていた。眼は充血しており、顔色も悪い。「お久しぶりです。こんなところで何をしてるんですか?もう美月さんには関わらないでほしいと九条社長を通して何度もお伝えしたはずですが」 迅くんは私を庇うように前に立っている。「父さんはもう関係ない。本当にイライラする。まさか美和だけじゃなく、美月にまで手を出していたんだな。俺が相当羨ましかったのか?九条グループの次期社長だった俺がそんなに妬ましかったのか?だから回りくどい方法を使い、俺を引きずり落として……」 孝介の言葉は異常だった。 考え方がおかしい。 そして怒りからか、手が小刻みに震えている。「なぜそんな発想になるのか理解できません。あなたを一度でも羨ましいと思ったことなどない。バカな人だとは思いましたけど」 ちょっと! 迅くん、ケンカ売ってるの? 間違ったことは言ってない。けれど、今の孝介にそんな言葉をかけたら余計興奮するじゃない。「はっ!そもそも俺が不倫とか言う前に、お前らはもうとっくにデキてたわけだ。クソ!!全部、全部、全部、お前が悪いんだ!!お前のせいで!!」 孝介はカバンから何か取り出した。「美月、俺から離れて。警察を呼んで」 孝介が取り出したのは、ナイフだった。 まさか、本当に!?「うんっ!」  私は震える手でスマホを取り出し、通報しようとした。 が――。「お前も美月も一緒に殺してやるよ!!」 孝介が私たち目掛けて走り出した。「美月、離れろ!」 私は迅くんの指示に従い、走り、二人から距離を取った。早く通報しなきゃ。 その時「キャー!!」という悲鳴が聞こえた。 迅くんを見ると、孝介との距離がとても近い。 迅くんは、お腹を押さえているように見える。「加賀宮さん!!」 亜蘭さんが走ってくるのが見えた。「やめろ!」という声と共に、亜蘭さんは孝介を蹴り飛ばした。 その反動で孝介は転倒するも、迅くんは立ったままだった。「迅くん!!」 彼に駆け寄る。 孝介は周りの通行人が取り押さえてくれ

  • Love Potion   それぞれの行方 15

    「良いよ」「やった!楽しみだな」 あっ、やっと笑ってくれた。 彼の表情に安堵する。 迅くんと一緒にお出かけするのは久しぶりだから、なんだか私も楽しみになってきちゃった。…・――――…・――― 昨日――。「亜蘭、俺にもしものことがあったら頼む」「イヤですよ。ていうか、いきなりもしものことって何ですか?」 休憩中、社長室のソファに横になり、天井を見つめていた。「せっかく美月さんと結ばれたのに、どうして弱気になってるんですか?」「美月が離婚したらもっとラブラブになれると思ってたんだけど、なんか美月が素っ気ない。同棲しようって言った時も断られたから、強制的に隣の部屋に引っ越しをさせたけど、真面目すぎて。もっと<迅くん大好き、愛している>って言ってほしい」 美月が近くに居るだけで満足しなきゃいけないのに。 さらに愛情を求めてしまうのは、俺の性格が歪んでるからか。「はぁ。美月さんのご飯をほぼ毎日食べることができて幸せじゃないですか。俺は加賀宮さんが羨ましいですけどね。ラブラブって言い方、面白かったですけど」 俺のキャラじゃないってことか。「そんなに悩んでるなら、もう一回しっかりと<同棲をしたい>って伝えれば良いじゃないですか?あ。あと、正式にプロポーズはしたんですよね?」 亜蘭からの容赦ない言葉にさらに自信を無くしそうだ。「……。言ってない」「えっ?伝えてないんですか?」 資料を読んでいた手が止まる。「美月さんに<大好き、愛している>って言われたいんなら、まず自分が行動しないと。相手からの愛情を求めてばかりいてはダメですよ」 真っ当なことを言われ、何も言い返せない。「<迅くんの隣に居ても自信が持てるような女性になるまではダメ>って言われたらヘコむ」 過去に美月にそんなことを言われた。 俺は美月が居てくれれば何も要らないのに。「プロポーズ、フラれるのが怖いんですか?仕事は完璧なのに。本当、プライベートは普通の人なんですね」 仕事だって普通の人間だけどな。「俺が知っている加賀宮さんは、弱音なんて吐くような人じゃなかったから、なんだか新鮮で面白いです。高校の時に、あんな人数相手にケンカ吹っ掛けてた人だとは思えませんよ」 アハハっと亜蘭は昔を思い出したかのように笑った。「そんなこともあったよな。あの時の俺は、今の俺な

  • Love Potion   それぞれの行方 14

    「俺の方から今日のことはあいつの父親、九条社長には伝えておく。あんな人通りの多い道の真ん中で大声出して騒がれて、もし通報されたら社長も困るだろうから。左遷の話は決定らしい。あいつが東京から出るまでの間、しばらくは美月も気をつけていて」 せっかくまたベガに行くことができると思ったのに。 役に立てることが見つかったと思った。 悲しかったけど、私が無理矢理出勤してスタッフさんたちに何か迷惑をかけてもイヤだ。「うん。わかった。孝介が近くから居なくなるまで、ベガに行くのはやめるよ。行ったり、行かなかったりでベガの人たちにまた迷惑かけちゃったけど」「それは美月が悪いことじゃないから。ベガのリーダーには俺の方から上手く説明しておく。孝介も引っ越したら忙しいだろうし、前みたいに社長のコネも使えなくなるから、仕事だって大変になるだろう。俺たちのことなんて思い出すヒマもなくなる。それまで我慢だな。あー。本当にいつまでもネチネチしてきて嫌な性格だな、あいつ。自分の行いが悪いって認めたくないんだろうな」 はぁと迅くんは溜め息をついた。「ごめん。迷惑かけて」「美月は謝らなくていい。とりあえず、出かける時とか注意して。一応、な?」「うん」 その一カ月後――。「迅くん、朝だよ!起きて!?」「う……ん。もうちょっと寝たい……」 彼は枕に顔を埋めた。「ダメダメ!遅刻するよ!」 私は変わらず迅くんと半同棲生活を続けている。 不安視していたことは何も起こらず、平和な日々だ。 孝介はもう地方で働いていると聞いた。私と住んでいたマンションも引っ越したそうだ。「今は真面目に働いているって九条社長が言っていたけど。他の社員もいる手前、しばらくはこっちには戻って来させないって言ってた」 迅くんがそう教えてくれた。 孝介が何かしてくるとか、考えすぎだったのかな。孝介はあれからベガにも現れていない。 本当にこれで孝介と離れることができて良かった。  相変わらず迅くんは仕事が忙しくて、一緒にいる時間も短いけれど、それでも彼が「ただいま」と変わらず帰って来てくれるだけで嬉しい。 夜の彼は激しすぎるところもあるけど、それも彼の愛情表現だと最近は思うようにしていた。そんなある日――。「美月、やっぱり一緒に住むところ探そう?」  仕事から帰って

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